目には見えないもの

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夕下がり。
木々の影が長く延び、
今、沈みかけた太陽がこの瞬間を、
オレンジ色に染める。


あたりももうすかっり薄暗くなり、
この夕焼けが妙にほっとする。

 

こんな夕刻の公園にはにかわしくない少女。
人気も少なくなった公園で、
彼女は一人何をしているのだろうか。

 

ブランコの手すりに腰を落ち着かせて、
かすかに揺れるブランコの方に向かって、
話しかける。


遠くのほうで木々がざわめく。

少し不思議な光景だが、
一人遊んでいるのだろうなと思っていた。


だが一瞬、この光景がなぜだか分からないが
不気味に映る。

 

そして彼女は話すのをやめ、
その両手をさっと前に差し出す。

なにもないはずの空中から、
彼女の両手の平に何か光るモノが、
ふわりと落ちる。

 

それを手に彼女は、
うれしそうに走り去る。

 

何が起こったのか分からなくて、
立ち尽くす私の周りで、
木々がざわざわとざわめきだし、
気がつくともうすっかり日も暮れている。

 

もう黒く落ち着いた木々のシルエットの向こうに、
月が出ている。

そして今 水平線から浮かび上がったばかりで、
まんまるに膨れ上がった月と目が合う。