スコール
-2-
脅威が去った後、
私は薄暗い部屋のなか、
無垢木のテーブルの上のランプのゆれる光と、
香の煙の向こうの窓…レースカーテンが引かれた、
モノクロームの世界を見入る。
見るといっても実際は何も見ておらず、
ただボーっとしているだけで、
時折何らかの思いなり考えが、
その窓からこのもの寂しい部屋を訪ねてくるので、
それを何も考えず待っているのだ。
相手をもてなそうと紅茶を入れて待っている。
カップも上等なものだ。
そうしているうちに、
外から誰かがこちらを恥ずかしそうに眺めているのを見る。
ボーっとしていたため、
何気なくそれを眺めていたが、
ハッとして帰ろうとする“誰か”を呼び止めようとする。
呼び止めようとするのだけれども、
誰だかわからないので、
いそいで走っていきこの部屋に招き入れる。
何か気恥ずかしかったのか、
よそよそしくするのでこっちまでそんな気がしてくる。
相手もそれを察してか、
お茶を一口飲んでカップを置き深呼吸する。
そしてゆっくりと話し始める。
とてものも静かな話し方だ。
私は相手の話にうんうんと相づちを打ちつつ、
相手の顔であろうあたりに向かって軽く微笑みかける。
ランプの光が弱く揺れるためか、
または紅茶の湯気越しに相手を見ているためか、
私にはその相手が標識の人影を、
立体的にしたようにしか見えない。
実際そうなのかまた本当の顔があるのか、
その匿名性の向こうに何があるのか、
見極めようとするのだけれども、
分かりかけるころには雨もやんできて、
その人影はまたそのモノクロームの世界へと帰ってしまい、
私は雨に濡れて少し艶を増した世界を何となく眺めている。