気配
つかみそこねた右手。
いつもそこで目が覚める。
何の夢だったのかも思い出せない。
でも何か大切なモノを、
手放してしまったのかもしれない…
不安がよぎる。
窓の外で枯葉が、
風でカサカサと震える。
不安を振り払うかのように、
ベッドから抜け出し、
いつも通り支度を始める。
朝霧に濡れた景色のせいか、
少しだけ肌寒く感じる…
一段落して入れたてのコーヒーを一口飲む。
なつかしい温もりにはっとする。
もしかしたら夢じゃなかったのかもしれない。
無意識に流れ出る露のような涙をぬぐいながら思う。
何か大切なモノを失ったのかもしれない。
大きな喪失感の中、
それでも季節は無常にも、
その秒針を先へ先へと進める。