木箱

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穏やかな顔をした白髪の紳士が、
その箱を開け、端から順に、
石に手を伸ばしそれを眺める。

 

まるで小さな子供を見るかのような、
優しい顔で石を眺め、
またそっと深紅のサテンの上へと戻す。

 

しばらく眺めて満足したのか、
でも名残惜しそうに石をしまい、
そして内ポケットから取り出した懐中時計も、
そこに一緒に収める。

 

そして そっとコレクションボックスを閉じる。

 

パチンと灯りを落とし、
その部屋を出て行く。

扉のスリッドから長く延びた黄色い光がちぢみ、
暗闇の中、その木箱の中で静かに、
懐中時計が時を刻み始める。