映画
「映画って、ハッピーエンドだとつまらないのよね。」
ポテトフライに手を伸ばしながら彼女は言った。
映画館帰りの、喫茶店での一言。
普段の楽しげな君には珍しい言葉だった。
「そうかもしれないね。」
僕は返した。
ただ君は今、遠くをボーと見ている。
その先の窓の向こうには何があるのかな。
雨がしとしと降る中、通る車の音が、
静かに行きすぎる。
彼女と同じように外を眺めながら、
今日はあいにくな天気だななんて思っていると、
また一言。
「映画って、ハッピーエンドだとつまらないのよね。」
だが、すぐまっすぐ僕を見てつぶやく。
「でも、ハッピーエンドがいいな。」
そこにはいつもの君がいた。
かわいらしく僕を見つめてほほえんでいる。
その仕草がたまらなくうれしくて、
僕は君がハッピーになれるように、
がんばるよなんて思ったんだ。
そう、この映画のエンディングは君の笑顔がいいななんて思ったよ。