少女
この石を君にあげよう、
男は言った。
彼女はそれを受け取り、
純粋な眼をして見つめる。
彼女は売春婦。
もうずっとこの粗末な小屋で客を待つだけの生活。
ある日突然何も分からず連れてこられた。
このあたりの地域ではよくある話だ。
生きるためにはどうしようもない。
彼女はもうこの生活にも慣れてしまい、
客に身を任せ、
いつものように心を隅へと追いやる。
その汚れ無き心は部屋の隅でひざを抱き、
目の前の出来事から眼をそらす。
次第に磨り減っていくような思いも薄れ、
彼女は淡々と日常をこなす。
いつしかその眼は光を失い、
彼女の世界には音と感覚だけが残る。
…もう何も見なくて済む。
彼女は笑ってみせる。
そして昔男からもらった石を手にして、
それをかざしてみせる。
その石は彼女の小さな手の中で美しく輝く。
まぶしいほどに光り輝くのに、
もうその光は彼女には届かない。
彼女は笑ってみせる。
がその表情とは裏腹に頬に涙が伝う。