悪夢
その夜私は頭まで毛布をかぶり、
ぶるぶると震えている。
冷や汗でびしびしょだ。
犬の遠吠え。
闇が動き出したのだ。
生物はみな息をひそめる。
ドクン…ドクン…
冷や汗のせいでお腹が冷えて痛い。
闇が迫ってくる。
犬の吠き声が遠のく。
闇にのまれていく。
気がつくと私は真っ暗な中にたたずんでいる。
次第に目が慣れてくる。
どうやら密林にたたずんでいるようだ。
木々の隙間から端まで欠けた月が、
黄色く不気味に光る。
キィキィ…ウキュキュキュキュ…
色んな声が頭上を交差する。
ジャングルはその魔力をもって、
私を迎え入れたのだ。
視線を深い林へと戻す。
そこらじゅうから視線を感じる。
呪術的な衣装を身にまとい、
奇妙な木彫りの面をかぶった人影が、
そこらじゅうにぼんやりと浮かび上がる。
囲まれている。
ギラギラとその目が異様な輝きを秘め、
横一列に並ぶ。
その異様な存在感に圧倒され、
さっと身構える。
褐色の手に持つ槍の先端が鈍く光る。
あの細く光る月と重なる。
といくつもの月が地面に落ち、
みなひざまずく。
そして何も分からぬまま、
導かれるままに彼らに付いていく。
密林の奥では大きな焚き火の周りを、
グルグルと人々が踊っている。
今宵私は招かれた客だったのだろう。
彼らと共に踊りだす。
ただの音の塊に身をゆだね、
ボーっと周りを眺める。
彼らの影はゆれる炎のせいか、
異様に大きく渦を巻き、
いくつもの影をつくる。
この祭典に招かれたのは私だけではなかったのだ。
渦を巻き影のように伸びた、
自分の体を見てハッと気づく。
うなりにも似た声が四方へと伸びる。
原始的なリズムが打ち鳴らされて、
意識は拡散していき、
残った肉体だけが永遠に運動を続ける。
ドクン…ドクン…ドクン…
ジャングルの夜は続く。