私は誰
いったい誰になるの

あなたは

分からなくて、聞いてみたの

誰に
何を

分からなくて
必死につくってみたの

手探りで
つくりあげてみたの

そう創作とは
自己欠如の肯定である

でも…

何をつくったの

誰につくったの

そう、詩とは
拡散する自己イメージである

自然

自然が好き
目を見張るような大自然の絶景から
足元に咲く名もない花の
健気な美しさまで

朝わくわくするような昇り陽の
ゆっくりと色づいていく世界から
気怠い午後の後退的な
夜と昼との入れ替わりまで

世界にまるで不自然なことはない

君に惹かれるのは自然な
ことなんだろう

静寂がやさしくみんなを包む夜に
君と世界を感じて
眠りにつきたい

難解な詩はいや
彼女は言った

楽しいことが好き
彼女は微笑んだ

人を蔑めることは嫌い
彼女は目を伏せて

そして口を噤んだんだ

照れくさいから好きって言わない
彼女は無邪気に笑った

でも幸せだと不安になることがあるの
彼女は目を逸らして空を見た

難解な思いを抱えたまま
僕ら二人

この都市の喧騒の中
それでもシンプルに
この気持ちだけでも

都会の夜

時が
空間が
思考が

君と僕を隔てる

都会の生活
今が収縮する

君の不安と
僕の孤独が
街の輪郭をなぞる

こんな暗い夜には
君にそばにいてほしい

都会の夜が君と僕を隔てる

光が微かに拡散する
闇が拡大をつづける

すべての存在が収縮する

こんな不安な夜は
君がそばにいてほしい

夢は拡大をつづける

人生観

死にたいとは思わない
けど、死にたくないと
ごねる訳でもない

ただ人生があるだけだ

生きる希望がある
そこには幸せがある

ただの幻想にすぎないのかもしれない

しかしまた
その幻想に浸っていたいと思うのも
ヒトだろう

幸せなんて語るものではない
ただそこにあるだけだ

美しさなんて必要以上に
求めるものではない
やはり、たたそこにあるんだ

心に平穏を
とるにたりる豊かな生活を
それが理想だ

しかし、それだけじゃダメだ

必要以上の幸せを
求める以上の美しさを
事足りる以上の豊かさを

それを糧に僕は息をする

そう呼吸するように
芸術を生み出そうと思うんだ

理想とする過不足ない生活
もう、それだけでも十分なのに

さらに芸術にふれられるなんて
なんて幸せなことなんだ

語らおう、求めよう

物語

君は言う
死ぬまでにやりたいことが沢山ある
その一つが

「いつか、自分の本を出してみたいの」

君は言う

「どんな形でもいいから
それを形にしたいの」

僕は思う

君の中にどんな物語が潜んでいるんだろう
君の中にどんな想いが潜んでいるんだろう

君の紡ぐ言葉が色づいて
君の書き出す物語を沢山の
色彩でうめつくして

きれいな景色を見せてくれるだろう

そうして、その物語の中に入り込み
そのままその世界へと
とけこんでしまえたらいいのに

きっと君が描く世界は
愛に溢れていると思うから

そう、その物語にふれる事が
僕のやりたい事の一つだよ

夢を見た
そう久しぶりに夢を見た
もう夢なんて見ないような
毎日を繰り返していた

機械的に寝る
もう疲れを取るためかどうかも
分からなくなっていた

でも、どうしてだろう

突然に彼女の夢を見た
彼女は笑っていたのかな
それとも怒っていたのかな

彼女の顔が目の前にふと浮かんだ瞬間
僕は眼を覚ました

でも、彼女はいったい誰だったんだろう
思いだそうとしても、もう思い出せない

そう、あのぬくもりも
電話ごしの少しくすぐったいような声も
彼女と出会えた偶然の奇跡も

そうやって
少しずつ忘れていってしまうのかな

忘れたくないよ…
忘れたくないんだ

でも、大切なその記憶は少しずつ少しずつ
体温を失っていく

そして、輝きも色あせ
いつしか白黒写真のように
ノスタルジーだけが残るんだ

忘れたくない、忘れたくないんだ

今一度、夢を見てもいいかな