一日

一日の始まりに
夢中で沢山の言葉を拾い集めました

それを積み上げて
それを組み立てて
なんとか形にしてみたの

キラキラ光るあの木漏れ日に憧れて
葉や水面や地面にぶつかって
跳ねて遊ぶあの日の輝きに憧れて

碧く遠く佇むあの山々の
雄々しさに抱かれて
その向こうに広がる澄み切った
自由な空に心惹かれて

洛陽のその暖かいオレンジに
名残り惜しさを少し引きずって

夜の星空のあまたの
微かに揺れる瞬きに心洗われて

なんとか、なんとか形にしてみたの

一日の終わりには
君にそれを届けたいなって思ったの

でも不思議だな
出てくる言葉は、ただ

「君が好き」

ショーウインドウ

憧れの向こうに
別の私を見る

届かない
だってガラス張りだから

不意に映る背景は
灰色の雨にくすんでいる

すれ違う傘の人々の憂うつな
流れを飛び越えて

雨を感じ
自由を感じ
踊ろうか

きっと私はここにいる
こうして生きていくんだ

跳ね返った水が
雲間から差した光の線を受けて
輝いた

希望

身支度はできたかい
慣れ親しんだ今を後にして
目新しい場所へ

どんなに美しいだろうか
どんなに素晴らしいだろうか

目の前の景色に
いったい何を見るのか

美しい心の君ならきっと
幻だってすくい上げるさ

探し物は見つかったかい

胸をいっぱいに膨らませ
うれしさを腕いっぱいに抱えて

そう自然に顔をほころばしながら
眩しいほどの光を浴びて

君ならきっと
それを本物にする

恋草

会えない日々は
あなたが恋しいなんて

ねぇダーリン

いつでも
私を想ってほしいなんて

ねぇ…

そんな渇望なんて
伝わらないように
必死に隠して

吐息で夜を落ち着かせ
静かに含んだ空気は膨らんで
いったいどこにいくの

…寂しい夜は
側にいてほしいなんて

ねぇダーリン

私が欲しいって
言ってほしいなんて

そんな願望なんて
胸の奥底でギュッと握りしめて

破裂しそうな衝動は
いったいどこに逃げたらいいの

咲き誇るバラのようになれたらな

美しい花にはトゲがあるのよ
きっとあなたはドキッとするかしら

ねぇダーリン
ねぇ…

私、待ってるのが分かるでしょ

そう、花弁の一枚にも
心ときめかしてね

形而上の風景

僕は見たんだ

かつての詩人が残した詩の中に
長く伸びた影と遊ぶ少女の
その後ろ姿を

彼女はどこにいったのか

僕は見たんだ

かつて描かれた絵画の無機質なマネキンと
それを取り囲む物質に生命が宿るのを

彼らはいったいどこに行ってしまったのか

僕は見たんだ

己が描いた、そのキャンバスに
奇跡が宿るのを

やはりどこにいったのか
いまだにそれを探している

野生

光る夜の
野生の動物たちが
静かにうごめく

息を潜めて
暗闇の中をまるで幻影のように
自らを見つけられるのを
避けるかのように

ともし火をまぶたに宿しながら
閉じた瞳には
まだ星空の残像が残るんだ

うごめく夜を感じて
ふいにざわめく危機感に
命の尊さを思う

全てはあの街に置いてきた
過去も未来も
あの通りの角に

それでもなお
ここでは生々しい生を
意義を感じてしまう

研ぎ澄まされていく感覚は
忘れていた野生のそのものか

やがて白む太陽に
むき出しの大地が光を讃え

影を引き離されたばかりの
世界の刹那と
起き抜けの不完全な思考は
互いに溶け合い

しまいには、私が
存在としてこの朝に沈殿するんだ

日が昇るたびに
私は眺めるだろう
遠く遥か彼方のあの街を

そして再び前を向き
ひたすらにまた旅をする
そうひたすらに

ツバメ

私は私を愛せるかな
静かな雨を窓越しに見ながら
今日も思う

そっと目を移した先の止まり木に
ツバメが三羽、四羽

沙霧のような雨に
羽を休めて
時折、たわむれ合ってる

いつかは冬を越え
心地の良い環境を目指すのだろう

季節を渡る雨が夏をつれてきて
そしてまた生命の輝きをもたらした

きっと茂緑のあの匂いと
君の匂いにつられて
私はまた恋をする

上げた髪の額を伝う汗で
体温よりも暑い日差しを
感じながら

多分私は渡り鳥
この人生の止まり木はあなたでしょうか